ビーチボーイズ
僕がまだ、学生だった頃、ビーチボーイズというドラマがあったことを、夕暮れ時の少し肌寒い風を感じながら、ふと思い出した。
二人の男がひょんな事から海の家で働くことになり、いろいろなことを経験しながら、自分の生き方を見つめ直していく一夏を描いたドラマだった。
当時も僕は、バケツでカウントした方が早い量のビールを飲みながら、そんな夏に憧れを抱きながら、そのドラマを見ていた。
ドラマの中では、あわただしく一日が過ぎていき、夕暮れどきになるとその慌ただしさをぼんやりと振り返りながら、浜辺に腰を下ろしてビールを飲むシーンが写し出される。
そしてそんな時間はいつまでも続くことはなく、いつか終わりが来ることを、皆わかっている。
夏がいつか終わることを皆わかっている。
そんなドラマだった。
今年の夏、僕は20何年かぶりに、シラフの頭で1日1日を過ごしている。
ドラマのことを思い出した時は、ドラマに対する懐かしさと、夕暮れ時に飲むビールの懐かしさを、同じように感じた。
きっともう少し前の僕だったら、ドラマのことを懐かしく感じ、ビールのことをとてもいとおしく感じただろう。
でも、今の僕にはどちらも
“ふと懐かしく感じた。”
だけだった。
もし、今も僕がビールを飲み続けていたら、どう思っただろう?と考えてみる。
もし、今も僕がビールを飲み続けていたら、きっと、
“あの頃に戻りたい”
と思ったに違いない。
でも、今の僕は知っている。
これからくる未来にこそ本当の価値があることを。
終わりが来ることを思うからこそ、悲しくなるのであって、未来を思うことが、結果的に明るい未来を造り出していくことを。
それは断酒にも同じことが言えると、僕は知っている。