父娘
僕には中学2年生になる娘がいる。
『断酒をしたことで、娘と過ごし、会話をする時間が増えた。』
何気なく書いた、この一文には色々なことを考えさせられる。
今回の断酒(今日でたしか93日目になる。)を除くと、娘が生まれてから一日中シラフだった日は、おそらく3日とない。
娘が生まれた瞬間も僕は酔っていたし、彼女が初めて何かができるようになった日も、辛いと感じた日も、嬉しかった日も、僕はいつでも酔っていた。
僕と娘との関係性は、いわゆる父と娘、というよりは、どちらかと言うと友達感覚のようだと思う。
これまではそんな関係性を特段気にすることもなかったが、シラフの頭でいろいろ考えると、そうなるに至った理由もまた、酒が影響している。
何しろ酔っているといろいろな事が煩わしくなり、結果的に飲みながらでも支障のない関わりに留めていた。
ということになる。
そんな自分勝手な関わりを今さら懺悔しても仕方がないけれど、そんな関わりにおいても、時々娘の言葉にはっとさせられることがある。
ある時家族でスーパーに買い物に出掛けたとき、(一年程前)アイスクリーム売り場で娘が突然、
「このアイス懐かしいよね。」
と言って差し出したアイスがあった。
そのアイスはとてもマイナーで、コンビニなどには置いていないものだった。
僕はとっさに娘が保育園時代の暑い夏、三輪車を押しながら娘を迎えに行き、帰りにスーパーのベンチに二人で座って食べた、そのアイスを思い出した。
その時も僕は酔っており、歩いて迎えにいった結果、あまりの暑さにそう至ったシチュエーションだった。
ビールが飲みたかったがために、迎えに行く前に飲み、結果的に炎天下の中歩いて帰ってきたその8年前の出来事を娘は大切な思い出として、記憶していた。
娘はその懐かしいアイスをとても大事そうに買い物かごにそっと入れた。
娘が小学生の頃、言われた言葉がある。
「○○ちゃんちはいいな~。○○ちゃんのお父さんはビール飲まないから、休みの日はいろんなところ遊びに行けて。」
夜、習い事の迎えに車で行った時に言われた言葉がある。
「遅くなってごめん。帰ったらビール飲んでね。」(自分が飲めないことでイライラしている空気をさっしたのだろう)
娘の運動会の日、僕は早く帰ってビールを飲むことを考えていた。
家族で旅行に行った時、ホテルに着いたらまず、ビールを飲むことしか頭になかった。
僕は孤独だ。生まれつき何か普通の人が本来持っている感情がかけていて、本気で喜んだり、楽しんだりできないんだ。
そうずっと思っていた。
それがアルコールによるものであると気がつけた。
過去には戻れないけれど、これからの未来をシラフで過ごせる時間が残されている。
その時間を大切に過ごしていく事が、これからの僕が望むことです。