アルコールを口にしなくなってから、一年が過ぎ、相変わらず僕は何かしらに夢中になっている。
アクアリウムにドップリとはまり、一辺が30cmの水槽の中の世界を自分の理想に作り上げる事にとてつもない喜びを感じた。
水槽から飛び出して、これまでほったらかしていた庭の草をむしり、芝生を並べ、毎日水を与え、縁の少し不揃いに伸びた葉をハサミで剪定した。
空いたスペースにはつる系の観葉植物を等間隔に植え、毎日成長を見守っている。
つい1年ほど前まで、酒浸りになっていつ死んでも構わないと思っていた人間が、酒に使わなくなったお金で植物を育てることに喜びを感じている。
気が触れたわけではないが、二匹の猫とよく話をするようになった。
相手はミャーとしか言わないが、僕に寄ってくるのだから悪くは思っていないだろう。
時々まだ、不意に言い様のない不安が押し寄せて来るけれど、日の光を浴びながら、生き物に関わっている時間がとても好きだ。
これが断酒する事で得られる充実かをなのかどうかはまだわからないけれど、今の自分がとても好きだ。